「見えます…近い将来、困難な運命の渦の中で、もがき苦しむ貴女の姿が…」 「そ、そんな…どうすれば！？」 「方法は、あります…」 「教えてください！ お願いします！」 「人はもともと、強いパワーを持って生まれてきます…そのパワーを自然に引き出すこと、…

髪を切ってきた。美容室ではだいたい店長さんに切ってもらっているのだけど、彼女は俺の髪を切りながら、新人さんを叱ったりすることがありまして。俺の髪を気持ち夏っぽくしながら、新人教育をも同時にこなす。レンジ１回で２品作る感じのテクだ。すごい。…

「僕の知る範囲では、それは野菜・果実をベースに香辛料、醸造酢、砂糖、食塩等をブレンドし、食品添加物を一切加えず、素材本来の自然な色や風味を活かしていた筈だよ。従来のものに比べて50％塩分をカットした、減塩タイプもある。確か、そういう話だった…

「タカシー！ お風呂入っちゃいなさーい！」 「うーん」 … 「ほらタカシー！ お風呂冷めちゃうわよー！」 「ごめーん、今、ちょっと手が離せないんだー」 「今ちょっと、手が離せないんだー」*1 *1:絵はりっつさんに描いてもらいました！ かわいい！

彼は最愛の人を失いました。 悲しみに暮れ、声も涙も出尽くした彼の心に唯一残ったものは、恐怖でした。次に待ち受ける、自らの死への恐怖ではありません。彼は、彼女を忘れてしまうことが怖かったのです。 彼は、彼女の亡骸の傍で、来る日も来る日も立ち続…

オメガという時計があります。言わずと知れた、スイスの高級時計です。 オメガは、高いです。大変に高価です。腕時計ひとつで数百万なんてのは、ざらにあるわけです。しかし、それを買う人は存在している。世の中には、安くて性能の良い、汎用な腕時計がたく…

「それでまずこちらの部屋ですが…」 「ここは寝室になります。以前はご家族が居間でお休みになっていたということでしたので、寝室を別途設けさせていただきました」 「日当たりも、だいぶ以前とは違いますね」 「そうですね。周りに大きな建物がありますの…

「するてえと旦那の見たのっぺらぼうてのは…こおんな顔じゃなかったですかい！？」 「なぜ」 「え？」 「なぜ、私が今話しただけの内容で、それが分かったのですか」 「なぜって、そりゃああんたが今、目も鼻もって…あっ！」 「そう、口。私は確かに、『目も…

月のない、暗い、静かな夜だった。 「夜明けを見に行こう。僕と一緒に」 私の手を取ると、彼はそう言った。声が上ずらないように注意を払いながら、訊く。 「え…今から？」 「そうさ。今から出れば、ちょうど間に合うはずだよ」 彼の手は大きくて、暖かかっ…