美容室でズコーとなった話

 髪を切ってきた。美容室ではだいたい店長さんに切ってもらっているのだけど、彼女は俺の髪を切りながら、新人さんを叱ったりすることがありまして。俺の髪を気持ち夏っぽくしながら、新人教育をも同時にこなす。レンジ1回で2品作る感じのテクだ。すごい。集中しろ。


 まあ別にそれで仕事が疎かになるわけでもないし、むしろそれでお店全体のスキルが上がるなら、win-winのね、win-winのあれかな…などと思っているのですが、ただ、人が叱られているところに居合わせるのは少しばかり居心地が悪い。


 それで今日もまた彼女の新人教育の現場に立ち会ってしまいまして。だからそっと目を瞑って、怒られている内容に聞き耳を立てていたら、「お客さんのところを離れるときは必ず一声掛けてね、不安になるでしょ?」みたいなことが聞こえてきた。あー、そうね、そういうのって大事、なんて思って聞いていたら、ふと声が止んで。ちょっと不思議に思いつつも、また叱られ現場を目撃するのも嫌じゃないですか。気まずいじゃないですか。だからそのまま目を閉じていたんですけど、一向に声はしない。自分の髪を切られるでもない。しびれを切らし、えいや、と目を開けたら、店長はなんかレジのとこで会計やってた。


 一声、な。一声。