放課後の別れ

「これ、返すよ」

彼はそれだけ言うと、私にぷいと背を向けた。沈みかけた太陽が、彼の後頭部のすぐ横に居座っていて、眩しかった。

私は安堵していた。こんな時に、私の心に浮かんだのは、まず、安堵だった。よかった。彼が後ろを向いてくれていて。きっと私は今、かわいくない顔をしているから。それはきっと、斜陽のせいだけではないのだから。

この短い間で、私は、彼になにをあげることができたのだろう。彼の少しずつ小さくなっていく背中を見つめながら、そして私は気がついたのだ。

彼が今、私に返してくれたもの。

「きびす」