世界の車窓から
「世界の車窓から、ってあるけどさあ」
「テレビ番組のね」
「どこへだよ!? って感じよな」
「え?」
「いやだからさ、世界の車窓から、どこへだよ!? って、感じしない?」
「しない」
「してよ」
「あれ別にどこからどこへ…みたいなことじゃないと思うよ、そういう『から』じゃないと思うよ」
「そうなの」
「多分…」
「なんか悲しくなってきちゃった…」
「ごめん」
「俺ずっと、世界の車窓から、どこへ行くんだろうなー、って、思ってたよ…そうして、生きてきたよ俺は…」
「なんかごめん」
「走る世界の車窓をグイッと上にあげて、隙間からこう、身を乗り出すイメージでさ…」
「危ないよ、でもごめん」
「もう、あれだわ。旅に出るわ」
「そんなに」
「旅に出て、世界のいろんなところを見て回るわ…船で…」
「そこは電車にしろよ」