鬼神のごとく

「その道を行く者であれば、彼の名を知らぬ者は居ない。彼は、それを遊戯からスポーツの域に、いや、もう哲学と言ってしまっても過言でないかもしれない、そういった高みにまで、それを昇華させたんだ。彼のそれに対する姿勢は徹底したものだった。敬服に値するなどというものではないな。周りの者が止めたくなるほどの、恐ろしいまでの執着。そう、あれは執着に他ならなかった」

「どうして、そこまで…」

「どうしてかは分からない。ただ彼は強く、たくましくあることを願った。そして何より、彼は卑怯な心を何よりも憎んだんだ。彼が追われる立場になった時も、そうさ。彼は動じず、逃げも隠れもしなかった。大した奴だよ、あいつは。俺たちには到底真似できん。そんな彼を、畏怖と畏敬の念を込めて我々はこう呼ぶんだ」

英雄譚を語るその男の声は高揚し、目は爛々と輝いていた。

「"かくれんぼの鬼" と」

「…」

「そう、"かくれんぼの鬼" とね」

「弱っ」

「彼はこれからも、未来永劫、"かくれんぼの鬼" で在り続けることだろう」

「はあ」

「彼は、逃げも隠れもしない。これからも未来永劫、"かくれんぼの鬼" で在り続けることだろうよ」

「まあ、そうでしょうね」