炉心融解

 料理の得手不得手は人それぞれだし、俺も上手い方ではないのであまり人の事はいえないんだけれども、知り合いにもうどうしようもなく奇天烈な料理センスの持ち主が居る。


 昨日はその人込みでの飲み会で、あの、家で作って飲む感じだったんですけど、ちょっと目を放した隙に茹でたパスタを片っ端から冷水でしめていた。先輩の彼女さんなので心の中で突っ込むだけに止めたのだけど、うどんか、と。そんなことしたら、パスタは合体するじゃないですか。自然の摂理じゃないか。そして彼女は一致団結したパスタたちを前に、「あれ、オリーブオイルでほぐすんだったね、忘れてた!」みたいなことを言っていて、もうなんだろ、とりあえず違うな、みたいな、違うところが違うな、みたいなことですけど、先輩の彼女なのでなにも言えずにむぐむぐ食べた。


 その後作った鶏の唐揚げは、揚げ始めるまでは順調で、やった! あとは放置しておけば唐揚げになるぞ! なんて、すっかり第四コーナーを回った気分でいたら次の瞬間、おもむろに鍋に蓋をしやがって。ぐんぐん上昇する温度。溜まる水蒸気。「危ない!」「待て、開けるんじゃない!」とうてい料理で飛び交う言葉とは思えないやり取りの後、臨界に達した炉心から黒こげの肉を取り出して、皆でなにも言わずにばりばり食べた。まだもたれている。