適者生存

 たまに「古い家電は壊れにくい」みたいな事を言う人がいる。しばしば「昔の日本は良かったのに」みたいなニュアンスと一緒に語られる、団塊の世代に多い物言いだと思う。というか他でもない、俺の母親よくこれを言うんですけど、これはどうなんだろう。


 多分、この論理は否定できない。古い家電は壊れにくい。壊れにくいからこそ、古くなったのだ。だからより正確に言うなら、古い家電が壊れにくいというよりは、壊れなかった家電だけが古くなることを許される、ということだと思う。


 これはダーウィンの進化論と似ている。どこかで養老孟司が言っていたことだけど、いわゆる適者生存、自然淘汰説は、論理的に否定することができない。なぜ生き物は進化したか、それは進化しないと死んでしまうからです。進化したやつだけが生き残りました。今ある生態系はそうして出来上がったのです。


 この論理は、実は結局「A=A」ということを繰り返し主張しているわけで、真理なんだろうけど、毒にも薬にもならないような気がする。それを言ったらお終いよ、みたいな感じがしてならない。なんで古い家電は壊れにくいのか、なんでキリンの首は伸びたのか、そういうこまごまとした部分に興味を惹かれるし、それこそが実は大事なんだと思いたい。