金太郎さんですよね

「あれ、あのー」


「はい?」


「あなた金太郎さんですか?」


「いや違いますけど」


「や、あなた金太郎さんですよね」


「人違いですね」


「えー、そうなんですか?」


「はい」


「見た感じ金太郎さんですよ、僕見たことありますもん」


「違いますって」


「だって、まさかり担いでるし。金太郎さんでしょ」


「違います、これは仕事で使うんです」


「またまた!」


「人違いです」


「それに、熊にまたがってるし」


「交通手段です」


「お馬の稽古じゃないんですか?」


「違います」


「なによりその服」


クールビズです」


クールビズ


「そうです」


「ノーネクタイどころか、ノーズボンじゃないですか」


スーパークールビズです」


「そういうのでしたっけ」


「はい」


スーパークールビズって、そういうのでしたっけ」


「ええ」


「でも金って書いてありますね」


「金融業なんで」


「はあ」


「金融関係の、職種なんで」


「やーでも、やっぱり金太郎さんだと思うなー」


「…」


「ねえ、ホントは金太郎さんなんでしょ?」


「…」


「金太郎さんですよね?」


「違います!」


「ひっ」


「違うって言ってるでしょうが! さっきから! 振りおろしますよ!」


「!」


「あんまりしつこいと、まさかり振りおろしますよ!」


「すみません! すみません!」


「まさかり担いで、振りおろしますよ!」


「ごめんさい!」


「全く、失礼な人だあなたは」


「いやそういうわけじゃ…ただなんとなく、なんとなーく、金太郎さんかなーって」


「違いますから、ホント人違いですから」


「そうなんですか…すみませんでした、なんかお引き留めしちゃって」


「いやいいんです、私こそついカッとなってしまって」


「…じゃあ、お仕事頑張って下さいね」


「はい。では私は行きます」


「お気をつけて」


「よし行くぞー、はいっしどうどう! はいどうどう!」


「やっぱり金太郎さんですよね」