歴史家ってちょうすごい

 文字から人の動きを追うのはとても難しい。

 今年の4月から今の職場にいるのだけど、初めて舞い込む仕事はやっぱりちょっと大変だ。ここに来て半年以上は経つので、いくぶん「初めての仕事」は減ってきている。それでもまだ無くなったわけではなくて、その都度に引継書のページをめくるのだけど、だいたい「前年の綴りを参考にしてください」みたいな事が書いてあって突き放された気持ちになることが多い。道を尋ねたら、「交番に行ってください」って言われたような気分。今日もそうだった。

 こうなると、分厚い書類の束を引っ張り出してきて、いちいち流れを確認するしかない。時系列が入り乱れた書類の綴りを一枚一枚見ていって、前任者の動きを脳内再生。これがかなり面倒で疲れる作業なのです。あ、この日に相手方から連絡。そのあとここに依頼ね。次にあれとこれを手配して、あ、その前に打ち合わせしてるのか…。今日はずっとそんなことしていた。なんだか探偵にでもなったような気分だった。

 小説のように、初めから「想像させる」ことを前提に書かれたものなら別だけど、そうでない場合、文字から人の動きを追うのは想像以上に難しい作業だ。2次元は簡単には3次元になってくれない。前任のやっていたたった1〜2年前の出来事ですらそうなのだから、歴史家なんかはとんでもなくすごいと思う。何千年も前の書物から当時の生活をあぶり出しちゃうなんて、どんなスキルだよ。そのスキルがほしい。すごくほしい。それがムリなら懇切丁寧な引継書でもいい。どっちかを僕に下さい。