オレンジ色の絨毯爆撃

 今朝は電車通勤。先週末に飲み会があって、自転車を会社に置き去りにしてしまっていた。お陰で久々の電車通勤です。ぎうぎうに詰め込まれて運ばれるのがあまり好きじゃなくて、ついつい自転車を使ってしまうのだけど、今日は思ったほど嫌じゃなかった。というかちょっと楽しかった。たまには良いなー、電車も。

 そうして駅に降り立ち、職場までの並木道を歩いていく。そこまで来ると、もう人の流れが出来ていて、みんなうちの職場に向かう人たちなんですね。ああそうだった、こっちの通勤ルートはこんな感じだったっけ、なんて思いながら流れに身を任せていたのだけど、はたと気付いた。何かがおかしい。どこか異様な雰囲気があたりを包んでいた。

 一緒に列をなす人たちが、下を向いて歩いているのだ。全員が全員、俯きながら重い足取りで歩を進めていた。その表情は一様に堅く、口を利く人もいない。え、怖い。理由が分からない怖さ。自分が存在しないパラレルワールドに迷い込んだような、もしくは知らない宗教的儀式の列に偶然紛れ込んでしまったような、そんな空恐ろしい感覚だった。

 事態が飲み込めないまま歩いていたら、足元でパキリと乾いた音がした。ギンナンギンナン踏んだ。上を見れば並木は全てイチョウで、黄色い天井のようだった。つまりみんなはそこから降りしきるギンナンを踏まないように、気をつけて歩いていたのです。渋面なのは臭いからだった。なるほどね! なるほどね…。一難さってまた一難である。被災した右足の処し方を思案しながら、ゾンビのような足取りで職場へ向かった。明日は自転車通勤にしよう。絶対に。