あらしのあとに

太陽の塔

太陽の塔

まだ暗い住宅街の中を通り抜けながら、これは単に元の状態に戻ったに過ぎず、たいした不幸に突き落とされたわけでもないし、淋しいわけでもないと考えた。(中略)彼女という桎梏を逃れ、私はようやく本来の自分自身に戻り、錯乱から立ち直ることができたのだ。これは僥倖と言えよう。

森見登美彦太陽の塔読了。後輩の女子大生に袖にされた主人公が、元彼女や友人知人、それらをとりまく状況と妄想の中でうごうごするお話。引用はふられた直後の主人公の心情。小難しい口調で、おバカを熱心にのたまう主人公がたまらなく愛らしくて好きです。そう言えば恋文の技術の主人公もそんなだった。森見登美彦は良いですね。

ときに昨日のエントリーでも触れたのですが、昨夜は大・失恋傷心会でしたー。うわーい。相手は、彼氏と別れたばかりの知人女性。とりあえず話を聞いてりゃなんとかなるだろ、とタカを括り、いざとなったら冒頭のような開き直りの視点を提示し、もしくは「重大な決断は先延ばしに、落ち着くまでは小さな決断から」という、前の職場で一緒だった保健師さん仕込みのにわかカウンセリングでちょっと良いこと言った気になってやろう、 と心の準備をして臨みました。

結果、撃沈。ものの見事に轟沈しました。俺は認識が甘かった。激甘だったと言わざるを得ない。

あのねー、なんかもう、すごいの。マシンガントークと言えばいいんだろうか。いつ息を吸ってるか不思議に思うくらい、途切れることなく紡ぎ出される感情の奔流。循環奏法なんじゃないか、あれは。恐ろしいものを見た。失恋直後の女性ほど恐ろしいものは無いと思った。

こちらに発言の機会を与える間もなく続くトーク。仕方がないので、とりあえず目の前の料理を成敗することに傾注しようと思いました。そう、「落ち着くまでは小さな決断から」である。相手のために用意した助言を、自ら実践する羽目になった。行動で示す男だ、俺は。

そして料理を片付けてしまった後は、手持ち無沙汰で、ひたすら手元のおしぼりでテーブルを拭いていました。ずーっと拭いてた。お陰でテーブルピッカピカになった。


5時間ものあいだ荒れ狂った嵐が過ぎ去った後は、台風一過のごとくスッキリしたような彼女の表情と、対照的にげっそりとやつれた聞き手の抜け殻、そして来店時よりも綺麗になったテーブルだけが残されていた。うう、疲れた。