周到で努力家で心配性な男の話

 男は銀行強盗へ入る決心を固めた。どうしても3億円が必要だった。


 男は着々と準備を進めたが、はたと行き詰った。3億円などという大金を、男は見たことがない。ましてやその大金が、果たして自分に運べるほどのものなのか、見当もつかなかった。


 しかし男にはどうしても3億円が必要だった。失敗は許されない。自分の計画に、不安を残すわけにはいかなかった。


 そこで男は、まず3億円を準備することにした。男は働いた。昼夜を問わず働き、稼いだ。稼ぎを元手に事業も始めた。そうしてついに3億円を手に入れた男は、3億円を目の前にして思った。


 ――これなら持てるな。