与作

 与作は木を切る。


 それがいつからだったか分からない。何の為にそうするのかすら、与作は忘れてしまった。知りたいと思うこともあったが、与作には義務があった。ある日は樫を、ある日は杉を。そしてまた今日も、乾いた斧の音だけが緑滴る山あいに物悲しくこだましていた。


 与作は、木を切る。